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「どうしてみどりさんは涙を流していたの?」
無言のままみどりさんが手を下ろしたので僕は地面に降りた。
そしてみどりさんは無造作にリュックの中やポケットを探りながら、
「失ってしまった大事な人を思い出していたの。でももう大丈夫…あった!」
リュックから地図を取り出し、
「ねえ、これからこの徳沢という場所に行きたいの。付き合ってもらえないかしら?」
僕は返事もせずに立ち上がりながらリュックを背負ったみどりさんの左肩に飛び乗った。
明神橋を渡り左岸ルートを徳沢に向う。
「コロンと話していると、すれ違う人はきっと私のことをおかしな目で見ているわね。」
実際、横尾方面から降りてきた人間がすれ違うたびにこちらを振り返る。
「気にしないで僕に人間界のことを教えてもらえる?」
「勿論気にしていないわ。それよりどうして人間を?…私は利便性を求めた代償に、
失った大事な物があることに気づいていない人間が嫌いなのよ・・・当然私も含めてね。
そんな私たちのことを知ってどうするの?」
「どんな暮らしをしているのか興味があるだけ・・・
でもみどりさんは僕が見えたから普通の人間と違うね。」
「好奇心旺盛ね。わかったわ
その代わり、この地のことや妖精といわれている貴方たちのことも教えて貰うわよ。
それと大事なことは私たち偶然の答え探しよね……ウフッ!」
「どっ、どうしたの?」
「この香りがオーディコロンでなくて良かったわ。コロンと重なってしまう…
そんな発想した自分が可笑しかっただけ…ごめんね。」

明神から徳沢までの左岸を散策するルートは、時折左手に開放される梓川を除いて
立ち枯れの木々に寂しさを覚えるような風景もあるが、
温度差をまったく感じられないみどりさんの心地よい言葉の鳴り響きに
温かく包まれていた・・・  つづく

    蕗の葉下の住人 20年11月14日(金)
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